多重債務防止という名目で、全国の銀行がカードローン利用者の正確な借り入れ状況を把握しようとする動きに乗り出したことが19年3月30日にわかった。
実は、銀行カードローンには明確な借り入れ上限額が設けられていない。
2010年にも、多重債務者を減らすという動きがあり、総量規制(年収の3分の1を超える借り入れはできない)という法律が定まった。しかしこの法案が適応されたのは消費者金融会社(アコムやプロミスなど)だけであり、銀行カードローンは2019年現在も、総量規制対象外だ。
そのため、消費者金融でお金を借り入れできなくなった債務者が、銀行カードローンに流れてくるというサイクルが出来上がっている。
これは総量規制の趣旨に反しているとして、各界から批判や指摘の声が絶えない。
こうした背景により、銀行側が重い腰を上げ、ようやく多重債務防止の動きに乗り出したと考えられる。
2021年以降借り入れが厳しくなる可能性

銀行カードローンに制限はかかるのか…?
個人の借り入れ状況は、信用情報機関にまとめて登録されている。
例えば、A社という銀行から50万円、B社という消費者金融から30万円の借り入れがあったとしたら、計80万円の借り入れがあるとの情報が、信用情報機関に登録されているということになる。
信用情報機関への借り入れ状況の登録は、2019年現在では月ごとに行っている。2月1日に10万、9日に20万、23日に5万借り入れした場合、2月中に計35万借り入れしたとの情報が登録される仕組みだ。
しかし、2021年中に、月ごとに行われていた信用情報機関への借り入れ状況の登録が日ごとに改定する見通しとのこと。
つまり、借り入れをした次の日には、信用情報機関への情報が更新されることになる。
このシステム変更に伴い、2021年度以降は、銀行カードローンの借り入れに規制がかかる可能性がある。
しかし、これはあくまで筆者の見解にすぎないが、実際に銀行カードローンに借り入れ制限がかかる可能性は極めて低いと踏んでいる。
今回のシステム変更は、あくまで銀行側が各界の批判や指摘を逃れるために「多重債務防止に乗り出していますよ」というアピールをしているだけのような気がしてならない。
そもそも、銀行からお金を借り入れする人が多ければ多いほど、その分利息で銀行側が儲かるわけだ。つまり、銀行側はどんどんお金を借りてほしいということ。
そんな実情がある中で、借り入れ制限を設けるのは避けたいと思うのが銀行側の真理なはず。
そういった背景をくみ取れば、銀行カードローンに借り入れ制限がかかる可能性は極めて低いと予測がつくということだ。
借入額の制限が強化されると生活が苦しくなるとの声も
消費者金融の総量規制のように、銀行カードローンにも借り入れ上限額が設けられたら、生活が苦しくなるという債務者は決して少なくはない。
お金を借り入れする理由は人によりさまざまだ。
ギャンブルや趣味嗜好にお金を注ぐために過度の借り入れをしている人に対しては、今回のような多重債務防止案は効率的に働くものだ。
しかし、子供の学費、企業のための投資、リストラにあい再就職までの費用などにお金がかかり、生活費が厳しい…そうような状況下で、やむを得ずお金を借り入れて真面目にやりくりしている人はたくさんいる。
多重債務のすべてが”悪”というわけではない。未来への投資として、銀行カードローンを有効に利用している人もいるということだ。
このような人たちは、今回の多重債務防止案に不安を抱いている。
なんとももどかしい事実。
銀行や信用情報機関は、個人の借り入れ状況の把握を徹底するだけではなく、利用者の借り入れ理由を明確にすることにも努めるべきだ。
念のため日ごろからお金の管理を徹底するのが望ましい
2021年までまだ時間はある。また、銀行カードローンに総量規制のような借り入れ額の上限が設けられるとは限らない。
しかし、やはり油断は禁物だ。
どのような状況が訪れても、柔軟に対応できるよう、今のうちにお金の管理を徹底するのが望ましい。
ギャンブルや趣味嗜好で過度の借り入れをするのは言語道断。
銀行カードローンで真面目にお金のやりくりをしている人は、更なる節約等の策を練っておく必要があるのかもしれない。